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ハイドン       2008年11月27日公開 交響曲第96番 ニ長調 「奇蹟」 クリスティアン・アルミンク指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団

楽曲解説

 ハプスブルク王朝の支配下で、ハンガリーの片田舎を治めた貴族エステルハージ家。18世紀後半、当主のニコラウスはヨーゼフ・ハイドンをお抱えの音楽家として雇い、30年近くにわたって様々な音楽を作曲し、演奏してきた。ニコラウスが1790年に世を去ると、その情報をいち早く聞きつけたヴァイオリニスト兼コンサートの興行主ペーター・ザロモンは、エステルハージ家の仕事からほぼ解放された58歳のハイドンに対し、ロンドンで新しいオペラと交響曲の作曲・指揮を高額の報酬で約束させた。ハイドンは同地へ二度にわたって赴き、自作の交響曲を演奏して、莫大な富と限りない名声を得ることに成功する。エステルハージ家に仕えた30年間でためた財産の十倍以上を、2度のイギリス訪問で得たハイドン。ロンドン滞在中に同地で初演された一連の交響曲は、「ザロモン交響曲」「ロンドン交響曲」と総称され、いずれも現代にまで残る重要なレパートリーとなっている。交響曲第96番「奇蹟」も、1791年(寛政3年・作曲家59歳)にロンドンで作曲され、そのまま同地で初演された。

 タイトルにある「奇蹟」とは、演奏会場の天井につるされたシャンデリアが落ちてきたにもかかわらず、誰も怪我をしなかった、というエピソードが元になっていると言われるが、どうやらこれは俗説らしい。

[PickUp! ここが聴きどころ]

 第1楽章では、序奏がニ長調で朗らかにはじまったかと思いきや、たった6小節(1'00")で重苦しいニ短調に変化する。ハイドンの作品は明朗快活!というイメージが先行しているように思われがちだが、こうした明と暗のコントラストがあるからこそ、快活さも生きてくるのだろう。第2楽章なども、明(長調)-暗(短調)-明(長調)という枠組みによって形作られ、明るく単純な旋律の美しさと、暗い複雑な書法(1'54)が、絶妙の対比を生む。第3楽章のオーボエの主題(2'35")は、オーストリアの舞曲レントラーの語法によって作曲されたもので、素朴な味わいが聴き手のほほえみを誘う。

 繰り返し演奏される第4楽章のロンド主題(冒頭)は、第1楽章の序奏、あるいは第3楽章のオーボエ主題と関わりを持っており、曲全体が同じ音型によって密接に結びついていることを示している。

作曲:ヨーゼフ・ハイドン(1732−1809)

「パパ・ハイドン」と呼ばれる人格者。交響曲・弦楽四重奏曲にとっての父親、モーツァルトやベートーヴェンの師匠としての父親、今日の「クラシック音楽」の基礎を形作った偉大な「父親」である。約30年、ハンガリーの貴族エステルハージ家に仕え、多くの作品を量産した。60歳を目前にして突如奮起。二度にわたってイギリスに渡り、大作オラトリオ「天地創造」の作曲など、新たな音楽の境地を切り開いた。享年77。

(文=広瀬大介)

収録:2008年9月7日 すみだトリフォニーホール

演奏者プロフィール

  • クリスティアン・アルミンク

    指揮:クリスティアン・アルミンク

     1971年、ウィーン出身。若い世代の中でもっとも活躍する指揮者の一人。小澤征爾のアシスタントを務めた後、ボストン交響楽団、ウィーン放送交響楽団、ウィーン交響楽団他と客演を重ねている。24歳でチェコのヤナーチェク・フィルハーモニー管弦楽団を指揮、2001/02年シーズンまで首席指揮者を務める。2003年9月、新日本フィルハーモニー交響楽団音楽監督に就任。若手指揮者の異例の抜擢として大きな話題を呼んだ。豊かな音楽性と端正な指揮姿は多くのファンを獲得している。

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