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今後のインフラ整備実現により、教育現場で求められるICT活用とは?
「スクール・ニューディール」構想が実現に向けて動き出す。これによって整うインフラを活用するには、教育現場の知恵が試される。児童・生徒にどう使わせるか、教員に求められる意識やスキルはどんなものか。そもそも、ICT化によって、どのようなメリットが得られるのか。様々な課題を、教育委員会が積極的にその支援を行い、機材を十二分に活用している上越市の事例に学ぶ。肝となるのは、機材をどのように現場に生かし、そのためには何が必要かという問題意識と、そのためにそれぞれの立場の教員が何をすべきかを徹底する周知体制だ。
ICT活用を支える幅広いサポート体制
 ここに至るまでの研修、ハードウエアの導入、インフラの整備に、曽田耕一常務理事が率いる、地元NPOである上越地域学校教育支援センター(JSiRC)の存在は欠かせなかった。

 現在学校で使われている特別支援教育用のパソコンの多くは、企業などからJSiRCに寄贈された中古のものだという。これをJSiRCがメンテナンスし、各学校に貸し出している。

 決して予算が潤沢ではない上越市で設備が整ったのは、この体制によるものともいえる。現在も代替機は常にストックしていて、何か問題があればすぐに交換可能だ。

 また上越市では、学校が安心してICTを活用することができる幅広いサポート体制も整えている。各学校には、学習情報指導員を派遣し、授業でのICT使用時のサポート、教育支援システムの校内研修、ネットワークのトラブル対応や整備などを行っている。

 実際に各校を回る指導員は9名いる。元教員など前職は様々で、必ずしもICTのプロではない。しかし、指導員に求められるのは「ICTのスキルよりもコミュニケーション能力」(曽田氏)という。1カ月の基本的な研修期間を終えてから教育現場へ出ている。

 短い研修期間でも現場での仕事がこなせる理由は、指導員の意識の高さももちろんのこと、各校で使っているハードやソフト、ネットワーク環境がほとんど同じであることが大きく影響している。新しい機器をネットワークにつなぐにも、IPアドレスだけを設定すればいいので、高度な知識は求められないのだ。

 現場の指導員の手に負えない事態が発生した場合には、事務所で待機しているICTに詳しい指導員が電話でフォローをする仕組みだ。
現場の意識の高さがすべて意識が変われば授業も変わる
 さらに特筆すべきは、データをバックアップする仕組みを持っていることだ。パソコンのデータがトラブルで消失すると、業務に支障をきたすだけでなく、精神的にこたえるものだ。

 上越市の小・中学校は地域によって光ファイバーの専用線やADSL、無線LANなどでネットワーク化されていて、それは最終的にはJSiRCの管理するJoRNEネットワークセンターの下層に位置している。各校のデータは毎日、各校のサーバーで自動的にバックアップされるほか、週に一度、日曜日には、ネットワークセンターのサーバーにもバックアップがとられる。学校側でトラブルが発生しても、最悪でも1週間前の状態には戻せるようになっているのだ。

 また上越市には、上越教育大学があり、元々先進教育に熱心な土地柄ではある。パソコンを教育の現場で利活用しよう、という研究は「昭和のころ、Windows 3.1が出る前からありました」と藤田氏はいう。サポートするNPOに恵まれている点は否めない。

 しかし、上越市の事例から学べる、学校でのICT活用を成功させる最大のポイントは、教育現場の意識の高さがすべてを左右するということである。どんな機器が導入されたところで、それを使うのは、教員だからだ。そうして、子どもたちも保護者も巻き込んでいく。

 藤田氏は「校務のICT活用は、ずいぶんと進んだと思います。次は授業の中で、さらにICT活用を進めたいと思っています」と決意を見せた。
設備を導入する際には使い方のビジョンが必要
 上越市の事例を振り返ると、教育現場でICTを活用するには、いくつかポイントがあることがわかる。

 まず、授業での活用においては、積極的に使い続けることだ。一度使われなくなった設備は、ずっと埃をかぶってしまうものだ。教員が使いづらいようであれば、その都度見直し、使いやすくなるように工夫することが大事だ。

 そしてもうひとつ、使い続けるために、教員の意識を高め、維持することが必要だ。これには例えば、動画やアニメーションの作成といったようなスキルは必要ない。児童・生徒に目を見開かせるような魅力的な仕掛けを、これまでの経験に基づき、パソコンや電子黒板という道具に適した体裁で作り直せばよいのだ。

 この気づきを与え、そしてそれを具現化するための技術の習得には、継続的な研修が欠かせない。

 また、授業以外の業務に関しては、校長以下教員が一丸となり、ICTを活用することのメリット─効率化により時間が生まれ、それを教務に使える─を理解し、その実現のために、使いやすいシステムをうまく取り入れ、毎日活用していくことが大切だ。

 管理職に対しては、システムの意義と利用のメリットを理解してもらう、意識の面での研修を、また実際にシステムに触れ、児童・生徒の学習情報を管理する立場の教員に対しては、操作の面での、きめ細かい研修が求められることは言うまでもない。

 そして、授業でもそれ以外の業務でも、いったん導入した機材、構築したネットワーク環境を維持し、メンテナンスするためのサポートメンバーが欠かせない。

 上越市の場合は学習情報指導員を派遣したり、NPOと連携したりしているが、保護者を巻き込んだり、地域と連携したりと、ほかにも方法はあるだろう。学校で無理なくICTを活用するためには、すべてを校内で賄おうとして、一部の教員に任せきりにするのではなく、それぞれの学校環境にあった、適切な応援団を見つけ、連携をしていくことも必要だ。

 ICTを導入し、インフラを構築するに当たっては、こういった使い方のビジョンを改めて考え直し、それに向けた体制作りを十分に考慮する必要があるだろう。
Column
子どもの目を守るには、教育現場での対策が急務

東日本システム建設と共同で開発した「スクールオフィス」の操作画面。教職員のスケジュール管理や子どもの情報共有など、できることが多く、かつ、使いやすい

眼球の発育と近視発生の年齢
人間の眼は、出生時は遠視で発育とともに正視(10 歳くらいから)へと進む。その不安定な前後数年(小・中学生)が近視になるもっとも危険な年齢。
蒲山久夫著/「テレビと学童の眼の衛生」より
 目に優しいはずの液晶モニターが今、高輝度で明るく大画面でさらに明るく強い可視光線が目を直撃。人の目に見える可視光だけでなく、紫外線、電磁波も出ており、これもあいまって、知らず知らずのうちに目の疲れを誘っていることが多い。画面で発生する静電気も、ドライアイなどの原因になる。大画面・高輝度化液晶によって、目の健康には一層の注意が必要になっているにも関わらず、ブラウン管が液晶に変わり、かつてのような画面のちらつきがなくなった分、油断してはいないだろうか。

 特に心配なのは、成長期にある子どもたち。今後ますますパソコンでの学習が促進される小中高生は、実は、眼球の発育期にある(右図)。子どもたちは疲れを感じにくいことから、視力低下が起こっても自覚が少なく、気づいた時には近視が進んでいたということにもなりかねない。このため、子どもたちにパソコンを使わせる教育現場では、これらのVDT障害を絶対避けなければいけない。強すぎる光を和らげ、紫外線や電磁波、静電気をカットするフィルターを装着するなどの対策が求められる。
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