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NEC担当者が語るデスクトップ・ノートパソコン開発のこだわり
NECパーソナルプロダクツ
PC事業本部
開発生産事業部
パーソナル商品開発部 主任
岡田真一氏

NECパーソナルプロダクツ
PC事業本部
開発生産事業部
パーソナル商品開発部 主任
岡田真一氏

 日本のパソコン黎明期から、常に世の中をあっと驚かせるような製品を次々に送り出してきたNEC。この夏の新モデルでも、いかにもNECらしい、斬新な発想に溢れる技術を搭載したモデルが多数登場している。とりわけ注目したいのが、もはやNECのお家芸ともいえる水冷システムを搭載したデスクトップパソコンの最新作「VALUESTAR W」と、スタイルを一新した高性能モバイルノートパソコン「LaVie J」だ。その進化のポイントは、一体どこにあるのか? 実際に開発にあたったエンジニア2人に聞いた。


世界初のHDD水冷を実現した液晶一体型デスクトップパソコン
「VALUESTAR W」
VALUESTAR W(VW790MG) intelロゴ

VALUESTAR W(VW790/MG)
水冷システムを採用した一体型デスクトップパソコン。NECのこれまでの水冷技術の集大成だ。


※NEC調べ

 NECが世界初の水冷デスクトップパソコンを発売したのは2003年。CPUの発熱を冷却するために水冷システムを採用、圧倒的な静音性を実現し、高い評価を得た。それから数えて、今回の「VALUESTAR W」は第4世代目の水冷モデルとなる。これまでの3世代の水冷デスクトップパソコンは全てタワー型。それに対し、「VALUESTAR W」では初めて一体型デスクトップに水冷ユニットを搭載したのがポイントだ。

  「タワー型デスクトップは、どちらかといえばハイエンド向けの製品。一方でデスクトップパソコン市場は近年、一体型が主流になっています。水冷による静かさを、より多くのお客様に体感していただきたいという思いから、水冷の一体型デスクトップパソコンに挑むこととなりました」と、NECパーソナルプロダクツ PC事業本部 開発生産事業部 パーソナル商品開発部 主任の岡田真一氏は語る。

CPUだけでなくHDDも水冷に
VALUESTAR Wの水冷ユニット

VALUESTAR Wの水冷ユニット
左手前がCPU、左奥がHDDの冷却パーツである。ひとつの水冷ユニットでCPU・HDD両方の冷却を実現した。

 一体型の筐体に水冷ユニットを導入するという以前に、第4世代の水冷としての開発目標もあった。水冷の最大の特長といえる静音性能をいちだんと向上させることだ。過去3世代の水冷デスクトップパソコンは、CPUパワーを目一杯使っても、ささやき声レベルの30dBという静音性を実現していた。これだけでも充分に静かだが、第4世代としてさらにそれを上回る、25dBの静音性を目指すことにしたのだ。

  しかし、25dBを目指すとなると、これまでのようにCPUだけを水冷で冷やすのではクリアできない。CPUと並んでノイズの発生源となりやすいHDDも含め、トータルで静音性を達成することが求められた。
「HDDからのノイズを低減するために防音構造を考えました。通常HDDは自然冷却ですが、防音構造で囲ってしまうと自然冷却が難しいため、HDDも水冷で冷却することにしました」(岡田氏)

  とはいえ懸念もあった。最も大きかったのは、CPUとHDDでは温度管理の規格が異なり、その両方の規格を満たしつつ1つの水冷ユニットで冷やすことが可能なのかという点だ。目標とする冷却性能を実現するために水冷ユニットのラジエーターファンを余計に回す必要があるとしたら本末転倒というわけだ。
「この点については徹底的なシミュレーションを行いました。水の流量、ラジエーターの冷却能力、ラジエーターファンの回転数の3つをさまざまな数値に変え、微調整した結果、1つの水冷ユニットでもすべてのバランスを満たせるポイントを見つけられたのです」と岡田氏は説明する。

CPUを効率的に冷却するためのフィン

CPUを効率的に冷却するためのフィン
CPUが発する熱を効率良く冷却液に吸収させるために、銅板に非常に細かいフィンが形成されている。

 

HDD冷却パーツにも工夫

HDD冷却パーツにも工夫
HDDの発熱を効率よく吸収させるため、水冷ジャケットに熱伝導効率の高い特殊なゴムを貼り付けた。これによって、十分な冷却性能を発揮する。

 


一体型ならではの課題

 一方で、水冷ユニットを一体型の筐体に収めるのも、やはり困難を極めた。特に問題となったのは、「VALUESTAR W」では、液晶ディスプレイの付いている本体上部が上下にチルトする構造になっているのに対して、CPUは本体上部の液晶部分、HDDは本体下部の台座部分に分かれているため、水冷ユニットの水が通っているパイプが可動部分を通ることになる点だった。これはタワー型にはない問題だ。

  これについて開発陣は、チルトの上下動を何度も行うことからくるパイプの劣化により水漏れが発生することがないか、複数台の試作機を使って何万回にも及ぶ試験を繰り返し、問題がないような構造を作り上げた。

  また、今回の水冷ユニットでは、CPUに加えてHDDの冷却も行わなければならず、従来のままであればユニット自体が大型化し、一体型の筐体に収まりきらないものになってしまう。この点については、CPUメーカーであるインテルの技術的ブレークスルーも大きく貢献している。従来の水冷モデルで使っていたCPUに比べ、「VALUESTAR W」で使用しているCPU「インテル® Core™2 Duo プロセッサー E4600」「インテル® Pentium® デュアルコア・プロセッサー E2180」では高性能化したにもかかわらず発熱量が半減したため、既存の水冷ユニットにHDDを冷やすための機構を加えても、CPU・HDDを両方冷却し、さらに約5dBの静音性能をアップさせることが可能となった。

音の「大・小」だけでなく「快・不快」まで視野に入れ開発
岡田真一氏

 一方で、静音化は水冷ユニットだけで実現しているわけではない。「静か」ということには、数値化できない部分がある。同じ25dBでも、音を何も感じないときもあれば、不快に感じるときもある。例えば、HDDが時折カリッと音を立てる音や、筐体からの振動が机に伝わり発生する音。こうした音は、パソコンを使用している際、実際の音の大きさ以上に気に障る。

  「要するに、音の『大・小』ではなく『快・不快』という問題ですね。こうした細かなフィーリングに関わる部分についてもチューニングを加えています」と岡田氏。ラジエーターファンにしても、ずっと一定の回転数で回っているのと、ある時は止まっていて必要な時に回転する、というのでは、実は後者のほうが不快に感じられる。そこで、「VALUESTAR W」では、ファンの回転数が一定でも十分な冷却能力を維持できる冷却ユニットを開発・搭載している。

  今後の水冷デスクトップパソコンの進化として、「25dBよりさらに静音化するというのはあまり現実的でない」と岡田氏は言う。どんなに静かな部屋でもノイズはゼロではなく、25dB以下を求めるということは、マシンが動作していない状態とほぼ同じとなるからだ。となるとターゲットは、上記の「不快となる異音をいかに消すか?」になる。

  「数値よりも、もっと感覚に踏み込んで考えるということですね。ただ、これは数値と違ってカタログなどでうたうのが難しい。どういうキーワードを打ち出せばお客様に訴求できるかも、技術開発と同時に考えています」。岡田氏は次なるターゲットをこう語った。

 


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