NTTドコモは2012年2月23日、災害発生時にユーザー相互間で音声メッセージを伝送するサービス「災害用音声お届けサービス」を、同年3月1日から提供すると発表した。音声データをパケット回線経由で伝送する仕組みとしており、大規模災害の発生直後などで音声回線が混雑して規制されている状況でも、連絡が取りやすくなるとする。対応機種のユーザーであれば、災害時に無料で利用可能。
同サービスは、NTTドコモのサーバーに音声メッセージを蓄積する仕組みを採っている。専用アプリをインストールしたAndroid搭載のスマートフォン、または同サービスに対応した従来型携帯電話から、メッセージを届けたい相手の携帯電話番号を指定してメッセージを最大30秒間録音する。
送信者が録音したメッセージがサーバーに登録されると、SMSで受信者に通知が送られる。受信者はSMSの指示に従い、アプリ上または専用のWebサイトからメッセージをダウンロードして聞くことができる。受信者がメッセージを再生すると、その旨を記したSMSが送信者に届く。受信者が回線に接続できない状況などを考慮して、受信通知のSMSはユーザーがメッセージを確認するまで、数分〜1日おきに繰り返し送り続けるようにしている。メッセージがサーバーに保存される期間は最大10日間。
メッセージを送信可能なのは、Android 2.2以上のスマートフォンまたは2011年の年末商戦向けモデル以降の従来型携帯電話。スマートフォンの場合は、あらかじめ専用アプリ「災害用キット」をインストールしておく必要がある。メッセージの受信は、「iモーション」に対応したスマートフォン/従来型携帯電話の全機種で可能。
現時点では送信者/受信者ともNTTドコモの端末に限られるが、KDDI(au)やソフトバンクモバイルなど、ほかの事業者との間で共同で運用する方針が決まっている。「現在はインタフェースの詰めを行っている段階で、今後各社が対応し次第、2012年度内にも各社がサービスを提供することになるだろう」(NTTドコモ 執行役員 研究開発推進部長の尾上誠蔵氏)。
2011年3月の東日本大震災では、発生当日に安否確認の通話が殺到して「通常の50〜60倍の通信があった」(NTTドコモ 取締役 常務執行役員 ネットワーク担当の岩崎文夫氏)といい、音声回線の規制が長時間続いた。一方でパケット回線は地震発生から3時間程度でつながりやすくなったとしており、音声回線より余裕があった。このため、電子メールなどを使えば発生当日でも比較的連絡が取りやすい状況だったという。ただし、「災害時は肉声で安否確認をしたい人が多くなるため、音声トラフィックが多くなる」(岩崎常務)という傾向がある。このため、Androidアプリなどで音声によるメッセージを簡単に送受信できる仕組みを構築し、かつメッセージの伝送にパケット回線を使うことで混雑を回避できるような仕組みとした。
当面のメッセージ送信/受信は、NTTドコモの端末でFOMAまたはXiの回線に接続している状態であることが必要。スマートフォンで「災害用キット」をインストールしていない場合や、対応機種であっても端末が破損、水没、紛失、電池切れなどした場合は送受信できない。ほかの端末や固定電話、インターネットなどでメッセージを受信することもできない。
この点について、「開発の前段階で検討もしたが、実現するに当たって携帯電話がない状況でどうするのか、適切な案を導き出せなかった。ほかにも、電話帳がなくて知り合いに連絡したくてもできないといったケースで、NTTドコモで預かっている電話帳を提供できないかといったアイデアはあったが、現状では実用化が難しい」(尾上執行役員)。
同サービスは、震度6弱以上の地震発生時など災害発生時のみの提供で、通常時には利用できない。この理由については、「災害時に気が動転した状況でも使えるほう、普段使いのサービスとしておくのが良いのは確かだが、全国無料で通話ができるサービスであるということもあり、災害時のみの提供とした」(岩崎常務)と説明している。
高齢者のユーザーが多い「らくらくホン」シリーズや、子供向け端末「キッズケータイ」シリーズへの対応については、「受信はiモーション対応機であれば問題なくできる。送信については、技術的な実装のし易さという点でスマートフォンが先行したが、iモード端末にも対応していく。今後の機種でできるだけやっていきたい」(尾上執行役員)との姿勢を示している。
同社は今回のサービスのほか、東日本大震災の発生後に進めていた一連の災害対策の施策が、2月末をもってほぼ完了したと明らかにした。例えば、地震によって停電が発生し、外部からの電源供給が絶たれても24時間は基地局が稼働できるようにするため、約1900カ所の基地局に自家発電機または24時間の連続駆動が可能なバッテリーを設置した。都道府県庁や政令指定都市の役所や警察・消防・医療機関といった施設のあるエリアを中心に、人口カバー率で65%のエリアが24時間稼働の基地局となったとする。さらに、地震により基地局が倒壊することを想定して、半径7kmと広範囲をカバーする「大ゾーン基地局」を全国104カ所に設置。人口カバー率で35%のエリアをこの大ゾーン基地局でサービスエリアにできるとする。
このほか、(1)避難所などに対する衛星携帯電話3000台の事前配布、(2)車載型基地局9台の増備、(3)ポータブル基地局24台の新規配備、(4)基地局相互間をマイクロ波通信システムで接続する非常用伝送路の100カ所への配備、(5)首都圏に集中している基幹設備の関西・九州への分散化、(6)緊急地震速報システム「エリアメール」による津波警報配信の開始、(7)NTTドコモの災害用伝言板とGoogleパーソンファインダー/Twitterとの連携、(8)「復旧エリアマップ」のユーザーインタフェース改善――といった取り組みを実施したとしている。
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