MetaMoJiは2010年3月3日、機械や装置の機能をモデル化(モデリング)するためのツール「OntoGear」を発表した。2010年5月10日に評価版の無償提供を開始する。特徴は、知識を構造化するオントロジーと呼ばれる理論をベースに、再利用可能な形で機能を記述できること。浮川和宣社長は「音楽における五線譜のようなもの。五線譜さえあれば昔の作曲家の音楽が再現できるように、人間の知識を記述して共有したり、将来に残したりできるツールになりたい」とビジョンを語った。
OntoGearは、大阪大学産業科学研究所の溝口理一郎教授とジャストシステムの共同研究によって生まれた。ジャストシステムの創業者である浮川和宣氏、浮川初子氏によるMetaMoJi設立に伴い、同社に事業譲渡された。「ジャストシステムは事業を中断するという決断をしたが、人間にとっての大きな損失につながるのではと残念に思った。それが、MetaMoJi設立の大きな理由の一つだ」(浮川氏)。
溝口氏は、オントロジー工学の分野では世界的にも最先端を行く研究者として知られる。同氏はオントロジーを「一歩下がってその世界を深く考え、一般性のある知識を作り上げること。簡単に言えば概念体系を作り、それをコンピューターに分かるように記述して共有することだ」と説明する。
OntoGearは、この理論を製造業向けに応用した。機械や装置のような人工物が持つ機能を細かな要素に分解し、「機能分解木」と呼ぶツリー構造にして記述する。特徴は、あらゆる機能を100種類程度の機能を示す言葉で記述できること。「人工物の機能は非常にたくさんあると思われがちだが、実は100語程度で記述できてしまう。これを発見したのは画期的なこと」(溝口氏)。
具体的には、機能と、それを実現する方式とを分離して考える。例えば「溶接する」という機能は、「接合する」という機能と、「溶融方式」という方式の組み合わせとするといった具合だ。さまざまな方式を組み合わせることで、少ない言葉で多くの機能を表現できることになる。
機能分解木は、製造現場のさまざまな場面で活用できるという。製品の企画や設計段階はもちろん、製品に問題が起こったときに原因を分析したり、特許出願の際に弁理士に製品の技術を説明したり、といった際にも便利だという。2002年から数社の企業で実運用したところ、5カ月間かけても原因究明できなかった問題が、機能分解木を使うことにより3週間で解決したといった成果が上がった。実運用した企業の1社である住友電工では、社長賞を受けるほどの好評を得たという。
オントロジーの概念自体がまだ一般に知られていないため、「まずは使ってもらって、自社の役に立つか、自分が考えていることに適合するかどうかを評価してほしい」(浮川氏)。そこで、Webサイトで無償の評価版を配布する。2011年からは有償化も計画中という。
OntoGearは主に製造業を対象にしているが、将来的にはさらに多くの知識を記述するためのツールに発展させる構想もある。浮川氏は「私はジャストシステム時代からナレッジマネジメントに取り組んできたが、オントロジーは人類が物事をとらえてそれを説明し、記述し、理解するためのメソッドとして最先端だ」(浮川氏)と話す。ソフトウエアやサービスのような他分野への応用をはじめ、人間の行動を記述できるシステムの開発も視野に入れているという。
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