2008年6月4日、Intelの低消費電力CPU「Atom 230」を搭載したMini-ITX規格のマザーボード「D945GCLF」が発売された。実勢価格は8000〜1万円。CPUを実装したMini-ITXマザーボードの初物としては、相当に安い魅力的な製品だ。日経WinPCはこのD945GCLFを入手、IntelやAMDのほかのCPUを交えて、Atomプラットフォームの性能や消費電力を測定した。本記事は、先日お伝えした速報版に評価対象のCPUとテスト項目を追加して、書き下ろした内容となっている。速報版と合わせてお読みいただきたい。
230は、Atomシリーズのうち主に低価格デスクトップPCでの採用を狙ったモデル。動作周波数は1.6GHz、FSBは533MHz、1次キャッシュは命令32KB+データ24KBの構成で、512KBの2次キャッシュを備える。シングルコアCPUながら、2つのスレッド(プログラムを実行する単位の一種)を同時に実行するように見せかけるIntelの独自技術「Hyper-Threading」を搭載しており、ソフトウエアからはデュアルコアCPUのように認識される。
230は、負荷に応じて電圧と動作周波数を切り替える「拡張版SpeedStep」は実装していないが、TDP(熱設計電力、実使用上の最大消費電力とみなせる)は4Wと、一般的なPC用CPUと比べると非常に低い。Atomにはこのほか低価格ノートPC向けの「N270」(1.6GHz、FSB533MHz、省電力機能あり、TDP2.5W)と、携帯情報端末向けの「Z500シリーズ」(TDP0.6〜2.4W)がある。また今後は、ダイ(半導体本体)を2個搭載し、ソフトウエアからはクアッドコアCPUに見えるバージョンも登場する見込みだ。
Atomは消費電力を下げるために、Intelの主力CPUで採用している「Coreマイクロアーキテクチャー」とは全く異なる設計にした。複雑な命令制御機構を排したシンプルな設計で、同じ動作周波数なら、CoreマイクロアークテクチャーのCPUより性能が低くなるのは確実。CoreマイクロアーキテクチャーのCPUから、消費電力と性能のバランスがどう変わったかが評価のポイントになる。
テストに使用したマザーボードとCPUは以下の通りだ。
D945GCLFは、グラフィックス機能を内蔵したIntel 945GCにICH7を組み合わせたマザーボード。対応メモリーはDDR2-667/533で最大2GBが利用できる。拡張スロットはPCIが1本。USB 2.0×6(背面×4、ピンヘッダー×2)、Serial ATA 3Gbps×2のほか、シリアル、パラレル、PS/2のキーボードとマウス、ミニD-Sub15ピンのアナログRGB出力端子などを備える。Realtek SemiconductorのALC662による4チャンネルオーディオや、100BASE-TXのLAN機能も搭載している。
Celeron 220はIntelが主に組み込み用途向けに出荷しているシングルコアCPU。製造プロセス65nmのCore 2シリーズと同じ、Coreマイクロアーキテクチャーの製品だ。動作周波数は1.2GHz、FSBは533MHz。1次キャッシュは命令32KB+データ32KB、2次キャッシュは512KB。TDPは19Wと、一般的なノートPC向けCPUよりは低いもののAtomに比べれば高い。D201GLY2Aはおよそ1万3000円で販売されている。
C7は、VIA Technologiesの低消費電力CPU。MM3500が搭載するC7-DはFSB400MHz、1.5GHzで動作する。TDPは20W以下。ノートPC向けのC7-Mは、日本ヒューレット・パッカード(HP)の小型ノートPC「HP 2133 Mini-Note PC」が採用して話題になった。VIAは既にC7の後継として、性能を強化した「Nano」を発表している。MM3500の実勢価格は店舗によって幅があるが、1万円を切っているところもある。
Core 2 Duo E7200とAthlon X2 4850eは比較のために用意したデスクトップPC向けデュアルコアCPU。E7200は、最新の45nmプロセスで製造した安価なCPUとして選んだ。実勢価格は約1万5000円。TDPは上位のデュアルコアCPUと同じく65Wだ。Athlon X2 4850eは、AMDが低消費電力版としてラインアップしているモデル。TDPが45Wと低いうえ、実勢価格が1万円と手ごろなため、店頭で人気となっている。
いずれも、マザーボードはグラフィックス機能内蔵のチップセットを搭載した一般的なタイプ(実勢価格は1万円台前半)で、消費電力を削減する機構を特に搭載しているわけではない。IntelとAMDの両プラットフォームにおいて、性能を維持しつつも消費電力が低めの構成がいい、と思ったときにお薦めしやすいパーツだ。
CPUとマザーボード以外は以下のパーツで統一した。
Core 2 Duo E7200やAthlon X2 4850eを使ったPCでは、メモリーをデュアルチャンネル構成にするのが常識だが、今回はAtom 230、Celeron 220、C7-Dの各プラットフォームと条件をそろえるため、あえてメモリー1本のシングルチャンネル構成にしている。デュアルチャンネルにすれば、以下に掲載した結果よりも高い性能を示すテストもある。逆にデュアルチャンネル構成時の消費電力は、掲載した結果よりもメモリーモジュール1本分(電源ユニットでの損失も含めておよそ1〜4W)上昇することになる。
今回のテストではメモリーにDDR2-800チップのモジュールを使用したが、Celeron 220やAtom 230のプラットフォームでは標準状態でDDR2-533として動作していた。モジュールのSPDにDDR2-667の設定がなかったためとみられるが、今回テストした230プラットフォームでは、BIOS設定画面でメモリーの速度を「Automatic」にしていると、DDR2-667モジュールでもDDR2-533で動作する状態だった。ところが、手動で667MHzに設定すると起動しなくなってしまった。
ジャンパースイッチを「Configuration」に切り替えて起動し、BIOS設定画面で再びAutomaticにすれば復旧できたものの、やはり667MHzでは動作しない。別のDDR2-800モジュールでも同様にDDR2-667では動かなかったため、ここではDDR2-533での結果を掲載している。いずれのマザーボードも仕様としてはDDR2-667をサポートしている。DDR2-667で動くモジュールを使えば、一部のテストで性能が向上するだろう。
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