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インタビュー

2010年2月8日

あの大作曲家ベートーベンも実は「ハイテク好き」だった

東京大学大学院人文社会系研究科・文学部 教授 渡辺 裕

田村 規雄=日経パソコン

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出典:日経パソコン 2009年12月28日号(執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
わたなべ・ひろし 1953年生まれ。東京大学文学部(美学芸術学)卒業、同大学院修了。玉川大学助教授、大阪大学助教授などを経て現職。著書に「聴衆の誕生」(1989年、春秋社、サントリー学芸賞)、「音楽機械劇場」(1997年、新書館)、「西洋音楽演奏史論序説」(2001年、春秋社)、「日本文化モダン・ラプソディ」(2002年、春秋社、芸術選奨文部科学大臣新人賞)、「考える耳」(2007年、春秋社)などがある。(撮影:中島正之)
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ベートーベンが強い関心を示した、ブロードウッド社製の同時代のピアノ(上)。後に主流となる「突き上げ式」の打鍵機構を備え(右)、ダイナミックな音響を実現した。それまで手や膝で操作していた音色を変えるためのレバーを、足先で操作するペダルの形に変えたのもブロードウッドだ。音域の拡大など、ピアノの技術革新に貢献し、ベートーベンの作品に少なからず影響を与えた(浜松市楽器博物館所蔵)
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渡辺氏は著書「聴衆の誕生」において、クラシック、演奏会、巨匠などの概念がいかに成立したかを考察しながら、現代の音楽文化を分析。「音楽機械劇場」では、音楽とテクノロジー、メディアの関係について論じている
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19世紀初頭には、太鼓やシンバルの音が鳴る「ドラム」用のペダルまで付いたピアノも登場した(浜松市楽器博物館所蔵)。ベートーベンの作曲活動もまた、そんな技術的な試行が繰り返されていた時代の空気を反映している
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 年の瀬になると聞こえてくる「第九」の大合唱。作者はもちろん、楽聖ベートーベンだ。「過酷な運命に立ち向かった意志の人」という堅いイメージが強い彼だが、実は「ハイテク好き」の顔を持つことはあまり知られていない。

 「機械でテンポを測るという発想がなかった時代に、発明されたばかりのメトロノームをいち早く採用したり、宮廷機械技師が製作した自動演奏楽器のために曲を書いたりと、ベートーベンは当時の“技術革新”を貪欲に取り入れた」と話すのは、東京大学大学院教授の渡辺裕氏。ベートーベンの作品といえば、彼の内面の表現であり、精神的な営みの結果だと思われがちだが、「それと同時に、ピアノという楽器の機械的な進化とともに歩んでいる。音楽というソフトと楽器というハードは、密接に結び付いていた」という。

 ベートーベンの時代、ピアノはまだ発展途上の楽器だった。より大きな音を出す、細かい連打に対応する、音域を広げるといった新技術が次々と登場し、改良が進んだ。「当時ピアノはハイテクの楽器で、今のパソコンと同じようなもの。ベートーベンはピアノを次々と替えたが、新しい機構のあるピアノを好んで使用したところがある」。

 彼のハイテク志向を顕著に示すのが、足で踏んで音色を変える「ペダル」の使い方だと渡辺氏は指摘する。ベートーベンは1803年に初めてペダル付きのピアノを入手したが、その直後に作られた「ワルトシュタイン」の楽譜には、大量のペダル記号が書き込まれた。ペダルを用いてさまざまな効果を試している姿は、パソコンやシンセサイザーの新製品を手にした現代人が、その新機能を試して楽しむ様子と変わらない。

 「ただし、依然として旧式のピアノや古い音楽観をベースにしていた面もある。そんな古さと新しさのせめぎ合いこそが、彼の音楽の独自性を生み出したのではないか」。



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