教育とITC Online

ホーム > 教育とICT > 一覧

インタビュー

2009年2月23日

「もがく力」が「火事場の発想力」になる

羽生 善治 棋士

染原 睦美=日経パソコン

印刷ページ
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Clip to Evernote
  • mixiチェック
「あとで読む」機能の使い方
出典:日経パソコン 2008年10月27日号(執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
はぶ・よしはる:1970年埼玉県生まれ。82年に小学生名人戦で優勝、奨励会に入会。89年の竜王をはじめ、次々とタイトルを獲得。94年、名人獲得と同時に史上初のタイトル6冠、96年には7冠王に。2008年10月現在、4冠(撮影:乾 芳江)
画像のクリックで拡大表示

 言わずと知れた棋士。インターネットの登場で、いや応なしに「情報戦」への適応を迫られる将棋の世界で、羽生氏が勝ち続けられるのはなぜか。その答えはたぐいまれなる才能以外に、自身が信念にしている「発想力」にあるようだ。

■将棋の世界でもインターネットが多用されるようになりました。

 調べる面では本当に簡単になりました。将棋関連のデータベースや対局のネット中継にアクセスできることは、地方に住んでいる人のハンディも取り除いたでしょう。ただ、その便利さが逆にデメリットにもなっています。例えば、今までは昨日の対局は見られなかったけど、今はネットで見られるから見ておかないと、となる。それで時間を取られ、常に何かに追われている感じが強くなっていますね。

■人より強くなるには何が必要でしょうか。

 大量の情報の中から、大切なものをいかに取捨選択するか、取得した情報にいかに自分のアイデアを付け加えていくのか、が重要になっていくと思います。そういったものはパソコンの画面を見ているだけでは会得できません。やはり盤に駒を並べたり、1行でもいいからメモを取ったりすることで得られます。五感を使って体全体で覚えることは、すごく大事な要素です。

 僕の場合、対局ではデータを忘れるようにしています。データに頼ると、感覚的なところは間違いなく弱くなる。データはデータとして押さえますが、対局の前はまっさらな気持ちで臨みます。その場で思い付いたり、ひらめいたりすることが良い手だったりするので、基礎的な知識や定跡とひらめきみたいなものの比重を半々くらいにしてますね。

■子どもたちに変化はありますか。

 僕が子どもだったときよりも、今の子どもの方がレベルは圧倒的に高い。
 ただ、最近の子どもはスマートで洗練されている一方、粘りがなくて非常にあっさりしている。それを考えると、子どもたちは定跡をたくさん覚えない方がいいかもしれません。

 もがく力って結構大事で、おぼれそうになったときに身に付けた力が本当の力になる。将棋も必ず、対局でどうしたらいいか分からない場面に出会うことがあります。そのときに、もがいて、データからではなくて、自分の頭から発想して答えを出せる人が強くなるんだと思います。



もっと詳しく

記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
印刷ページ

「インタビュー」の記事一覧(新着順)

関連記事

キーワード

将棋
ホーム > 教育とICT > 一覧  

最新刊のご案内