だいぶ時間が経過してしまったが、2011年7月22日にノルウェーで起きた事件についてもう一度振り返っておきたい※1。社会に憎悪した「個人」の犯罪としては、その被害があまりにも大きかったからだ。
また、2011年8月にロンドンのみならず英国各地で起こった連日の暴動も、社会に憎悪する個人の多さを際立たせた。
世界各地の先進国で起こる無差別殺傷事件、暴動、クラッキング、先鋭化するナショナリズム……。豊かな国の人々が、社会に憎悪する。無差別に人を傷つけ、建物に火を放つ。情報を脅かし、公の場で誹謗する。人々の生命、財産、情報、尊厳を脅かす個人の行動が目立つ。
その背景をノルウェーの事件から思索してみたい。
犯人が事件の5日前、2011年7月17日にTwitterに書き込んだという1文が「One person with a belief is equal to the force of 100,000 who have only interests(信念ある1人の人間は、興味だけの10万人と同じ力がある)」である。
名言のようにも聞こえるが、その信念は別の方向に向けられるべきだった。
彼は、人々に見られることを意識した写真でわざわざTwitterやFacebookなどのアカウントを開いている。「人々に見られたい」「認められたい」そんな気持ちが伝わってくる。彼は本当に孤独だったのだろう。
Twitterに投稿された文章は、功利主義者のJ.S.ミルによる「One person with a belief is a social power equal to ninety-nine who have only interests(信念ある1人の人間は、興味だけの99人に匹敵する一つの社会的な力になる」という原文に対して皮肉を込めたつもりらしい。
この1文は、引用集である英語版のウィキクオートのJ.S.ミルの項目に掲載されている。恐らく犯人は、ミルが社会民主主義や自由主義に影響を与えたとの記述がウィキペディアにあることから、この文章を利用したのだろう。
功利主義の中心的な考え方は、社会的な望ましさは人々の幸福の大きさ、つまり効用によって決定されるという単純なものである。人々が今でもよく口にする「(最大多数の)最大幸福」は、功利主義の考え方を代表する。
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