最近は企業のクラウド導入と言うと、プライベートクラウドが紹介されるようになってきました。プライベートクラウドとは、他社のサーバーとリソースを共有しない形態を指します。一方でリソースを共有するのがパブリッククラウドです。従来の共有サーバーと専用サーバーのような違いです。他社とサーバーを共有したくないという、いわば感覚的な動機からプライベートクラウドは日本では受け入れられようとしています。
データセンターで自社専用のハードウエアを所有あるいはレンタルする場合と、自社内に仮想サーバーそのものを設置して自社所有クラウドシステムなどが代表的な形態となりつつあります。
最初は外国にデータがあるのは危険だという考えから国内にサーバーを置こうというニーズが生まれましたが、やっぱり外にはデータを置けないよねという日本らしい考えから、自社ビルのごとき自社所有クラウドシステムが生まれたのでしょう。
しかし、これだとクラウドのメリットが失われることは明確です。リスク分析を行なってリスクとコストのバランスを高次元で実現しようという考え方が一般的ではない日本では、「コストよりも何となく心配」「自分の手元にあれば安全」という考え方が先行してしまうのでしょう。
また、自社所有型のクラウドシステムを選択する企業の傾向としては、色々な細かい環境に対する要望を実現できないという理由もあると聞きます。日本ではリアルで構成しているシステムをそのまま仮想化する傾向にありますので、通常提供されているサービスでは対応できないケースが少なくないのです。そこで行き着くところがプライベートクラウドということになるのです。
しかし、それは世界的な流れではないようです。つまり“ガラパゴス化”しようとしています。このようなことをTwitterでつぶやいたら、ある方から「ガラウドだね」というつぶやきをいただきました。
まさに、日本はガラウドの道を突き進んでいるのかもしれません。
一方で、仮想サーバーが価格やサービス面での競争を激化している影響で、従来のレンタルサーバーなども安くなってきています。他社と同居したくないというプライベートクラウドの考え方を突き詰めるなら、別に仮想システムである必要はないのです。従来のレンタルサーバーやラックを借りたレガシーなシステムでもいいのです。仮想コンピュータのような新しいサービスには必ず未知の障害対応というコストがつきまといます。
今の日本で行われているようなリアルサーバーを仮想サーバーに移行するというアプローチでは、基本的に起動された仮想サーバーはサイズも変更されず、ずっと動きっぱなしになります。このような運用ではクラウドのメリットは生かせません。必要に応じて立ち上げたり、停止させたり、CPUやメモリー構成、ディスク容量などをダイナミックに変更できたりするところにメリットがあるのに、それを生かすような検討を行わないケースが多いのです。
残念ながら私の知る限りにおいてはガラウドの導入が進められている所が多いようです。
クラウドシステムを活用するのであれば、パブリッククラウドの利用も視野に入れ、さらに、クラウドの特性を生かしたシステムの再設計を行いつつ、セキュリティについてもリスク分析をコスト対効果と合わせて経営判断を行なうように、ITや情報戦略そのものも変革しないと、使い方を間違った道具の使い方になってしまいます。
私自身も自社のシステムを仮想環境に移そうと考えていましたが、レンタルサーバーも視野に入れていこうと考えています。
【三輪信雄(みわのぶお)】
1995年より日本の情報セキュリティビジネスの先駆けとして事業を開始し、以降情報セキュリティ業界をリードしてきた。上場企業経営者やITセキュリティだけでなく物理セキュリティについても知見があり、技術者から経営者目線まで広い視野を持つ。
政府系委員も数多くこなし、各種表彰、著書・講演も多数。2009年から総務省CIO補佐官を務める。
S&Jコンサルティング株式会社 代表取締役
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