「マイクロソフトがヤフー買収から撤退」
このニュースが流れた後の週明けのシリコンバレーは、3カ月続いた緊張の空気から解き放たれて、台風後のような ちょっとした疲労感に覆われている。いくつもの新聞を飾っているのは、ヤフーCEOジェリー・ヤンの疲れ果てた不機嫌そうな表情。先週末は、「マイクロソフトの買収攻勢に打ち勝って、ヤフーが勝利の祝杯をあげているらしい」などといった噂が耳に入ってきたが、どうも事実はそれまで伝えられてきたものといろいろ食い違っていたようである。
まずひとつは、社員はともあれ、ヤフー株主のブーイング。マイクロソフトの最終的な買収提示額1株33ドルに対して、ヤフーは「それは安すぎる」として37ドル以下では応じないとしていたとされるが、ヤフーの株主には「それほどつり上げずに身売りすべきだった」と、経営陣に怒りを募らせている人々も多いらしい。買収がお流れになった後、ヤフーの株価はガクンと下がり、これが怒りの炎に油を注いでいる格好だ。
また、この3カ月間、われわれが抱いていた構図は、「必死になってヤフーを手に入れようとするマイクロソフトVS.これに必死に抵抗するヤフー」というものだったが、ジェリー・ヤンは一夜明けて「われわれはずっと買収に乗り気だった」と、意外なことを述べている。折り合いがつかなかったのは価格だとされていたのだが、マイクロソフト側は「ヤフーが代替案を提示しなかった」と述べ、ヤフーは「カウンタープロポーザルを出したのに、マイクロソフトはネゴにまったく応じなかった」と言う。そもそも認識が食い違っているのである。
はたまた、意外なのが、マイクロソフトのスティーブ・バルマーが、実はこの買収に確信を持ちきれていなかったらしいということ。彼は社内の打ち合わせで「もう辞めようか」と何度も口にしていたらしいが、ヤフーに攻撃を仕掛ける一方で、他方では会社としてのヤフーの価値を蔑むといった分裂気味な行動に出ていたらしい。
いずれにしても、漁父の利を得たのは、ああ、やっぱりグーグルである。グーグルは買収攻勢の最中に、グーグルの広告技術をヤフーの検索サービス上で展開するというテスト協定をヤフーと組んだ。これは一見、二社にとってウィン・ウィンとなる仕掛けと理解されていたが、実はマイクロソフトに対して目障りなタンコブをつくって買収を妨害しただけでなく、現実的にはヤフーを弱体化させてしまうだろうとも言われている。マイクロソフト+ヤフー連合をもっとも怖れていたのはグーグル。うまくやったものだ。グーグルはヤフーよりもずっと若い会社なのに、この立ち回り方はずいぶん老練していると言うしかない。
これからのシナリオは、なかなかに不気味で複雑である。まず、ジェリー・ヤンはヤフーを立て直す手腕を今度こそトコトン問われるという、すさまじいプレッシャー下に置かれているはずである。そしてもし、ヤフー株がどんどん低下を続けたなら、マイクロソフトがニンマリと笑って買収に舞い戻ってくる可能性もあるだろう。いや、そうなったらグーグルも買収に乗り出そうとするかもしれない。
買収ストーリーは終わったように見えるが、本当のところはまだまだ未完なのである。

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