サテライト(衛星)・ラジオのメジャー、XMラジオとシリウスの合併が本決まりとなった。2社は昨年から合併話を進めていたが、アンチトラスト法(独占禁止法)に触れるのではないかと、司法省と連邦通信委員会が審査していたものだ。
サテライト・ラジオを代表する2つの会社の合併なのに、世の中の反応は「ああ、そうですか」という程度の冷めたものだ。この2社が華々しくデビューした2001年頃とはずいぶん変わってしまったと思う。メディア市場がそれだけ変化を遂げたということだ。
何と言ってもサテライト・ラジオの魅力は、コマーシャルなしで好きな音楽をどんどん聞けることである。どちらのラジオ局も100局近い音楽チャネルを用意して、ジャズ、ラテン、クラシックなどをさらに細分化したこまやかなプログラミングを誇っている。好きなタイプの音楽をニッチにじっくり楽しめるというわけだ。
それだけではない。2社は有名人のトークショー・ホスト獲得のために、ここ数年間何億円級のギャラ競争を仕掛けてきた。シリウスには人気ホストのハワード・スターンやカリスマ主婦のマーサ・スチュアートが、対するXMにはエンパワーメント(自己啓発)の女王、オプラ・ウィンフリーが陣取っていた。
日本でラジオと言えば、時代遅れなメディアと見られがちだろう。ところがアメリカでは、どっこいラジオは生きているのだ。何を隠そう、ラジオはテレビなどより「知的なメディア」とすらされている気配もある。公共放送NPRの朝や夕方の番組にははものすごい数のファンがいるし、内容も確かにいい。
車に乗っている時間が長いのも、ラジオ人気の理由の一つだ。ニュースの合間に、忙しく道路情報や天気予報が差し込まれるAM局にチューンしているドライバーは結構多いと思う。
だからデビュー当初は、XMもシリウスも、わざわざ月々10数ドルの視聴料を払い、サテライト用のカーラジオを買っても加入する意味があると思われていた。しかし、加入者数はまったく伸びなかった。多分、タダモノが世の中にたくさん浮遊している中で、このラジオ局に払う有料料金がお手頃かどうかの判断が、一般消費者につかなかったからだろう。
さて、この2社の合併が承認されたというのは、市場占有にならないということ。つまり両社は互いが敵なのではなくて、競合相手は別にいると判断されたということになる。その本当の敵とはインターネット・ラジオやその他ネットに接続する音楽エンターテインメント機器である。
おりしも、アップルがiPodをサブスクリプション制にするために動いているという噂である。何でも、検討されているビジネスモデルは2つ。一つは、現在のiPodの価格に100ドルほどを上乗せし、購入したiPod を使い続ける限り、無制限にiTunesストアーから音楽をダウンロードできるというもの。
もうひとつは、月々のサブスクリプション料金を払うことで、同じく無制限の音楽ダウンロードが許されるというもの。ある調査によると、消費者は月々7〜8ドルならばその手のサービスにお金を使ってもいいと考えているらしく、そのあたりにサブスクリプション料が定まることも考えられる。iTunes では数セントしか稼げなかったアップルも、サブスクリプションなら利ざやが大きくなる。
人気のiPod がそんなビジネスモデルになれば、サテライト・ラジオはお手上げだろう。iPodは,歩いていてもオフィスのデスクでも使えるし、カーオーディオに接続も可能だ。音楽を無制限に聞けるのなら、XMやシリウスのサービスと何ら変わらないどころか、自分が選んだ音楽だけが聞けるという点では、こちらの方が優れてもいる。
サテライト・ラジオが生まれて、まだ数年足らず。早くも弱肉強食の餌食を目にしている気分である。
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