韓国では娘の大学合格のお祝いにまぶたを二重に整形する手術をお母さんがプレゼントするなんてもう誰も驚かない古い話しになっている。しかも最近では、新しい季節は新しい顔で迎えられるようにというわけで、冬休みなどの長期休暇を利用した整形手術についても、あまり抵抗なく受け入れられるようになってきた。
そんな情勢を反映してか、新学期の始まる3月に入って、ポータルサイトのキーワード広告の単価も「整形外科」と「皮膚科」関連のものが最も高くなっている。キーワード広告はオークションでより高い金額で入札した会社(人)の広告を掲載する仕組み。通常はユーザーが検索結果画面からキーワード広告のリンクをクリックすると1回当たりの相場は高くても数百円程度だ。それが新学期を迎えて「整形」「脂肪吸引」といったキーワードに入札が集中し、1回クリック当たり3万1930ウォン(日本円で約3193円)もするようになったわけである。キーワード広告から一日に100人のユーザーが広告を出した企業のサイトに訪問したとすると、ネット広告料だけで毎日30万円以上払うことになる。1カ月に換算すると900万円にものぼる金額だ。
「脂肪吸引」の次に高いキーワードは「しゃくれた顎」で約1295円、「鼻整形」が約1234円、「頬骨」が約1290円。この他にも「乳房拡大」「顔面輪郭修正」など整形に関するキーワードが高額の上位を占めている。今では整形のうちに入らなくなったと言えるほどポピュラーな二重まぶた化する手術は「二重再手術」がキーワード上位にランクしていた。整形手術の途中、出血多量で死亡したり、植物人間になってしまったりという怖いニュースが連日報道されているというのに、厳しい就職難がここ数年続いているせいか、柔らかい印象を作りたい、好感の持てる顔になりたいという願望は男性にまで広がっている。
韓国インターネットマーケティング協会によると、韓国のキーワード広告市場は2004年の2160億ウォン(約216億円)から2007年には7800億ウォン(約780億円)に成長。2008年は1兆ウォン(1000億円)を超えると推定されているという。最大手のポータルサイトNAVERを運営しているNHN社(日本でもHangameというオンラインゲームポータルを運営)の2007年の売り上げは9202億ウォン(約920億円)、営業利益はなんと3895億ウォン(約389億円)、前年比それぞれ60.5%、69.5%も増加した。売り上げの53%が検索広告によるものというから、韓国のキーワード広告の半分以上がNAVERに集中していることになる。ちなみにキーワード広告の収益の70〜80%がNAVERの取り分で、残りはオーバーチュアが持っていく。
NAVERのトップページのバナー広告のサイズは390×100ピクセルで、500万回の露出保証で約150万円、1日1社のバナーしか表示しない固定広告の場合は約1300万円もする。韓国の広告業界は、テレビの次がネットと新聞の競争になっているほどで、ラジオや雑誌広告はとっくの昔にネットに追い越されてしまった。韓国は2008年からWibro(モバイルWiMaxの規格)の新規端末も追加され、携帯電話のパケット定額制も広がっていることから、ますますネットにつながる端末が普及し、これからもキーワード広告の需要は増え続けるだろう。さらに高額な値段を付けるキーワードにどんなものが登場するのだろう。
日本の若い人が暇さえあれば携帯電話をいじるのと同じように、韓国の10〜30代の若いネットユーザーは何でもネットで検索してみないと気が済まない。友達や上司の言うことよりポータルサイトでユーザー同士が質問して答えを書いてくれる「知識検索」や全新聞と放送局のニュースを検索できる「ニュース検索」の結果を信じる傾向すらある。それがキーワード広告だとしても、知名度のあるポータルが変な会社の広告を上位に載せるわけがないと信じてクリックする。ただ、ポータル側は広告料さえもらえればどんな会社がどんなキーワードで広告しようがあまり構っていないように感じる。
韓国のテレビ番組にもよく出演する有名な整形外科医は「ポータルサイトのキーワード広告を利用するような整形外科は、みんな手術の経験がないか経験の浅い病院ばかり。自分の大事な身体の一部を預けるわけですから広告に惑わされず医者と相談して病院を決めましょう」という。医者と相談しただけでかなりの相談料を取られることになるので、無料で情報を得られるネットを重宝するのもやむをえないのは分かる。ただ、客観的な情報なのか広告なのかの見分けがつきにくい情報もネットには少なくないので注意が必要なのは間違いない。
ちなみに韓国の某ポータルサイトの説明によると、新学期のシーズンが終わると今度は「貸出」がキーワード広告の1位になるというから面白い。整形の後は、お金を借りて手術代を払うということなのだろうか。
【趙章恩(チョウ・チャンウン)】
ITジャーナリスト。高校卒業まで東京で育ち、韓国ソウルの大学卒業後、ソウル在住。日本経済新聞「ネット時評」、西日本新聞、BCN、夕刊フジなどに連載。著書「韓国インターネットの技を盗め」(アスキー刊)「日本インターネットの収益モデルを脱がせ」(韓国ドナン出版)
「講演などで日韓を行き交う楽しい日々を送ってます。韓国情報通信部と傘下機関・IT企業の対日戦略リサーチ&コンサルティング、日韓IT視察を企画運営するJ&JNETWORKの代表であり、韓国で唯一、日本とのITビジネス交流を図る非営利団体JIBC(Japan Internet Buisiness Community)の会長を務めています。日韓両国で生活した経験を活かし、韓日のIT事情を比較解説する講師として、韓国の色んな情報を分りやすく伝えるジャーナリストとしてもっともっと活躍したいです。
韓国はいつも活気溢れ、競争が激しい社会なので変化も早く、2〜3ヵ月もすると街の表情ががらっと変わってしまいます。こんな話をするとなんだかきつそうな国〜と思われがちですが、世話好きな人が多く、電車やバスでは席を譲り合い、かばんを持ってくれる人も多く、マンションに住みながらもおいしいものが手に入ればおすそ分けするのが当たり前の人情の街です。みなさん、遊びに来てください!」
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