日本でも発売が開始された台湾ASUSTeK Computer(以下、ASUS)の低価格パソコン「ASUS Eee PC」。この製品は昨年6月に、199米ドルパソコンとして発表されたものだ。しかし、日本国内での販売価格は5万円前後。流通コストを入れても、首をかしげたくなる価格差だ。実は、その背景にはEee PCが持つ、「2つの顔」がある。
Eee PCは昨年6月、台湾・台北市で開催されたコンピュータ関連見本市「COMPUTEX Taipei 2007」で、米Intelが推進する「The Intel World Ahead Program」に基づく製品として発表された。つまり、パソコンがまだ普及していない「新興市場開拓」の役を担う製品として、199米ドルという戦略的価格が付けられたわけだ。
しかし、実際には違った。昨年末に台湾や中国、北米市場で販売が開始されたEee PCの実勢価格は、最下位モデルで299米ドル前後、主力モデルは399米ドル前後だった。ASUSによれば、199米ドルという価格付けは、あくまでも新興国市場向け価格であり、教育機関などにはシステム構成が異なる製品を同価格帯で販売しているのだと言う。具体的には、現在市販されている製品とは、バッテリーの容量(持続時間)や、メモリー、フラッシュメモリーなどの容量が異なっているようだ。
パソコンが普及している米国や台湾などの地域でも、Eee PCは好調な売り上げを示している。そこには、ASUSがEee PCに与えたもう1つの役割「モバイル・インターネット・デバイス」としての顔が見えてくる。
これらパソコンやデジタル製品の市場が成熟した地域において、パソコンの最大の競合相手となるのは携帯電話だ。日本はもちろん米国や台湾などでも、メールやインターネットの閲覧であれば携帯電話で事足りる。ならば、あえて高価なパソコンを買う必要がない、と考えるユーザーは多い。
しかし、携帯電話とパソコンでは検索サイトの結果結果が異なるし、メールの使いやすさも違う。台湾ではWindows XPではなくLinuxをベースとした、メールやインターネット利用を主としたモデルが主流で、こちらも売れ行きは好調だ。しかも、299〜399米ドル前後という価格は、最新の携帯電話と同等、もしくはそれよりも安い設定だ。Eee PCは、画面サイズや解像度、メモリーやハードディスクに変わる記憶装置としてのフラッシュメモリーの容量、どれをとっても一般的なノートパソコンと比べると見劣りはする。しかし、競合製品を携帯電話とするなら話は別だ。ASUSは日本国内におけるEee PCの発表でも、この製品をパソコンではなく、モバイルインターネットデバイスと位置付けている。Eee PCは、製造コストギリギリの価格帯を設定しても、携帯電話に奪われたユーザー層をパソコン市場に取り戻そうという役割も担っているのだ。
Windows XPを搭載して5万円前後という、日本におけるEee PCの価格設定は携帯電話を相手とするには、やや高価にも感じられる。しかし、同社関係者や販売店によれば、Eee PCの売り上げは好調だと言う。“市場の拡大”、それは成熟産業となったパソコン業界にとって共通の願いだ。Eee PCは、そのパソコン市場の裾野を広げるための切り札として、ASUSだけでなく同業他社からも期待されている。
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