「日本であることのこだわり」のデザインを考える時に、避けて通れないのが、日本の町工場の参画、すなわち基盤技術と熟練技能のデザインである。
この問題を考える時に特筆したいのは、ハワイ島マウナケア山頂に誇り高くそびえ建つ、「すばる」文部省国立天文台ハワイ観測所である。
「宇宙創生の謎に挑む、人類の最も鋭い眼」の実現をテーマに、10余年の歳月と、400億円の費用を投じた「すばる望遠鏡」の開発プロジェクトは1998年12月、その記念すべきファーストライトの日を迎えた。そこに集ったのは、計画から完成までに参画した、国内外の天文学者、三菱電機をはじめとする大手メーカーの技術者、宇宙航空観測の熟練した要素技術を持つ日本の町工場の親父たち、そして建築家やデザイナーなどの数多くの関係者たちだった。
ユニバーサルデザインの世界では今、「ユニバーサルリレーションデザイン」という考え方が台頭してきた。商品やシステムの開発、設計の段階から多くの企業、あるいは技術者が、いわゆる「コラボレーション」の形で参画し、みんなが使いやすく、各社が応分のメリットを供与できる製品を開発する、といった取り組みである。例えば、次世代型のキッチンを開発しようとする時、それはもはや住宅設備メーカーだけの仕事ではなくなり始めている。家宰 管理のITシステムを検討している家電メーカー、家庭用燃料電池コジェネシステムを開発しているガス事業者などとの連携が、開発の前提になり始めている。
「すばる望遠鏡」の開発は、まさにこうしたユニバーサルリレーションデザインの、突出した、そして世界的な成果である。
マウナケア山頂に建つ、機能美を全面に、そしてシンプルに打ち出したシンボル性の高いドームの建築デザインは、並び立つ各国の望遠鏡のなかでもかなり目立っており、日本の研究施設としての存在感を強くアピールすることにも成功した。
しかし、口径8.2m、単一の鏡としては世界一大きな主鏡と世界最新鋭の技術を駆使し、宇宙からの可視光と赤外線を観測できる望遠鏡設備こそ、日本のものづくり技術の発信に巨大に貢献している。「すばる望遠鏡」が、日本のブランディングに大きく貢献する、コミュニケーションデザイン施設として機能し続けている事実を、私たちはいの一番に讃えるべきだと思う。
こうした日本の熟練技能が形となった望遠鏡の対極に、顕微鏡がある。本年度、 「ニコン ネイチャースコープ ファーブル フォト」がグッドデザイン賞金賞を受賞した。それは、ニコンならでは基盤技術と熟練技能の参画により、普段使っているデジタルカメラで、野外におけるミクロの世界を観察記録できる喜びを実現したものだ。「撮る楽しさ」「見る楽しさ」を、「使う楽しさ」へと発展、拡張させたこの顕微鏡は、未来の科学者たちを育成する優れたキッズデザインとして、まず高く評価できる。
また、アウトドア顕微鏡としてのファーブルシリーズを発展させ、その撮影専用光路に、同じく同社のデジタルカメラシリーズを装着させようという発想は、極めて合理的で、インタラクティブデザインとしても優れている。ヘッド部を回転させ、任意の位置で観察できる操作性、簡単に屋外へ持ち出すためのケースやストラップへの配慮、植物性プラスチックの採用など、トータルなデザインマネジメントが形にした優れものである。お子様のいる読者には、是非ご購入をお奨めしたい逸品である。
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