任天堂が2006年末に発売する据置型ゲーム機の新機種「Wii(ウィー)」が注目を集めています。同社はかねて製品のコンセプトや機能の一部を公開していましたが、9月14日に開催した説明会で実機を使ったデモを実施し、価格や発売日も発表したことで、同社の戦略がより親近感をもって多くの人に迎え入れられたのだと思います(関連記事)。
Wiiのゲーム機としての可能性は、既に多くのメディアが報じている通りです。マニア層だけでなく幅広いユーザーが遊べるように配慮したこと、ファミリーコンピュータやPCエンジン、メガドライブといった過去のゲーム機向けに作られた旧作ソフトも遊べるようにしたこと、コントローラーを振って遊ぶというインタフェースを前面に押し出したこと、そしてプレイステーション3やXbox 360より手頃な2万5000円という価格などが、ユーザーの高い支持を得るのではと考えられています。
もちろん、発売前の製品なので現段階で断定はできませんが、説明会場で流通業者や報道関係者が見せた反応は「ニンテンドーDS」のときに匹敵する勢いがありました。プレイステーション3が1万円以上の対抗値下げに動いたことも、Wiiの前評判の高さを裏打ちするものと言えるでしょう。
同社幹部のプレゼンテーションや会場でのデモンストレーションを見ながら、私が気になっていたのは、Wiiのもう一つの可能性です。それは、「ホームコンピューター」ともいうべき、敷居の低い家電、ネット端末としての可能性です。
Wiiを起動すると、まず「Wiiチャンネル」というメニュー画面が立ち上がります。ここには、ゲームのほか、ニュースや天気予報、SDカードスロット経由で読み込んだ画像のビューワー、付せん紙を書いて張るような感覚で使える電子メールなどがあります。ユーザーは必要に応じて追加のアプリケーションソフトウエアをダウンロード購入でき、Wiiチャンネルのチャンネル数が増えていく仕組みとなっています。
私がホームコンピューターとしてのWiiに興味を覚えたのは、パソコンやDVDレコーダー、テレビなどとは異なるアプローチの仕方を感じ取ったためです。具体的には3点ほどあります。
第1に、Wiiでは徹底的に難しさを排除している点です。標準で提供するコンテンツは上記のように分かりやすい、取っつきやすい、そして必要性を感じやすいものに絞られています。操作用のコントローラーである「Wiiリモコン」のボタン数は9個(うち1個は十字キー)と大幅に減らしており、テレビやDVDレコーダーのような1〜12の数字ボタンすらありません。パソコンやインターネットの知識を既に持っているユーザーには物足りないかもしれませんが、その代わり初心者の感じる敷居の高さはほとんどないと言えます。
第2に、Wiiは使いたいときに電源を入れ、使い終わったら電源をオフにする前提で開発されていることです。「毎日電源を入れてもらえるよう考えて開発した」(任天堂 代表取締役社長の岩田聡氏)と言うように、ユーザーに意識的に電源をオン/オフしてもらうことで、機器としての存在をアピールしているように感じました。Wiiは電源を切っていても、ニュースと天気予報は常に最新のものに更新されるよう実装しており、毎日電源を入れるたびに、即座に新たなコンテンツに触れられるような仕掛けが施されています。デジタルテレビやDVDレコーダーの電子番組表(EPG)が自動更新されるのと似た仕組みですが、ニュースや天気予報といった身近なコンテンツにおいて、そうした仕組みを提供することで、常に最新の情報に触れられるという技術の恩恵をより得やすくしていると感じました。
第3に、任天堂がWiiでホームコンピューターを目指していると一言も言っていない点です。岩田氏が「毎日Wiiチャンネルを使っているうちに、チャンネルの中に入っているゲーム機能にも興味を持ってもらえるときが来るかもしれない、そこからゲーム人口を広げていきたい」と語るように、同社としては、Wiiチャンネルも、簡便なインタフェースも、コンテンツ配信も、ゲームの世界へ誘導するための第一歩に過ぎないと言うのです。ホームコンピューターを目的でなく手段としてとらえているところに、これまでにない新たなアプローチを感じました。
一時期もてはやされていたネット家電やIPv6、全チャンネル録画サーバー、そしてホームサーバーといった製品は、このところ沈静化しています。それが、Wiiをきっかけとして、再び活気を帯びる日が来るかもしれない。そんなことを考えながら、年末のゲーム機商戦を心待ちにしている次第です。(金子 寛人=日経パソコン)
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