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2006年5月16日

携帯電話機市場の“今”を読み解いてみる

金子 寛人=日経パソコン

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(執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
 

 ゴールデンウイーク前後に相次ぎ発表された、電機・通信業界の2005年度連結決算について取材しました(関連記事)。そこで感じたのが、携帯電話をめぐる“地殻変動”です。KDDIやシャープが携帯電話事業で増収増益を記録しました。一方で、老舗の端末メーカーであるNECや松下電器産業の携帯電話部門は赤字。NTTドコモも2年連続の減収決算とパッとしません。

 そこで、業界全体の動向はどうなのだろうと思い、調べてみたのが冒頭のグラフです。電気通信事業者協会(TCA)の携帯電話契約数統計と、経済産業省の機械統計を基に算出した、携帯電話機の月別の販売動向です。青色の線が新規加入の販売台数、緑色の線が買い替えでの販売台数。太線はそれぞれの12カ月移動平均を示しています。

 まずは、市場の大半を占める買い替えの状況です。2001年半ばと2003年末に大きな需要の山がありましたが、ここ2年ほどは販売台数が減少傾向を示していました。それが、2005年末から再び上昇に向かい始めています。

 このところの減少傾向には、いくつかの原因が考えられます。一つは、ユーザーが買い替えたくなるような携帯電話機の新機種がどれだけあったのか、という点です。上述した2つの山についていえば、2001年にはJ-フォン(当時)が「写メール」を始め、その年の暮れにはNTTドコモが第3世代携帯電話(3G)サービスの「FOMA」を開始しました。2003年には、KDDIが3Gのパケット通信料を定額にするサービスを提供しています。

 2004〜2005年にもトピックスはありました。非接触型ICカード機能を内蔵した、いわゆる「おサイフケータイ」の発売や、トランシーバー型の通話サービスであるプッシュ・トゥ・トーク(PTT)対応端末の発売です。ただ、少なくとも統計からは、販売台数を押し上げるほどの効果は確認できません。

 もう一つの要因は、通信事業者の端末販売に対する戦略の転換です。NTTドコモやKDDIは、2006年11月に開始予定の番号ポータビリティーに備え、既存顧客の囲い込みに注力しました。家族で複数回線契約した際の割引条件を拡充するなどの戦術が奏功し、各社とも解約率は軒並み減少しました。ただ、その副作用として買い替え需要が抑制されたとの見方ができます。

 売れば売るほど儲けが減るという、通信事業者独特の事情もあります。各社とも3Gの高価格帯の端末では、販売店が1台売るごとに、3万円を超える奨励金を販売店に支払っています。そのため通信事業者にとっては、端末が売れることは売上高の押し上げになる一方、営業利益を押し下げる要因にもなります。

 NTTドコモの場合、「ドコモプレミアクラブ」という会員制組織でユーザーを囲い込む一環として、同一端末を2年以上使用しているユーザーへ電池パックを無償提供するというサービスを提供しています。同社が2005年度の決算で、減収ながら営業増益を記録した(関連記事)背景には、こうした事情があります。

 それがなぜ、ここにきて再び増加へ転じたのでしょうか。一つには、音楽プレーヤー機能を内蔵した端末が新たな市場の牽引力として寄与していると考えられます。もう一つは、NTTドコモの「FOMA 70xiシリーズ」や「SIMPURE」に代表されるように、手ごろな価格で機能や性能、デザインもこなれた機種が増えてきたことで、2Gを使い続けてきたユーザーの買い替えを促したことが考えられます。短期的には、NTTドコモ、KDDI、ボーダフォンの各社が新年度商戦をにらんで一斉に新機種を投入したという事情もあるでしょう。

 さて、青線の新規加入についても見ておきましょう。国内では携帯電話機の普及が進み、最新の統計(2006年4月末)では9200万件の契約があります。当然、新規加入も漸減傾向にあることが見て取れます。新規加入は例年、新年度を控えた3月に最も増えるのですが、その山もここ数年はだんだん低くなっていました。

 ところが2006年の3月は、久々に新規加入が100万台を超え、102万4300台に達しました。100万台の大台超えは、実に3年ぶりのことです。高齢者向けに分かりやすい操作体系を実装した、いわゆるシンプル携帯のヒットに加え、防犯意識の高まりから子供に携帯電話機を持たせる家庭が増えていることが背景にあると考えられます。

 今後しばらくは、番号ポータビリティーの開始に向け、通信事業者各社は総力戦を繰り広げることでしょう。各社とも2006年に入ってから大きなインパクトのある新機種を相次いで投入しています。

 KDDIはHDDを内蔵し、大量の音楽を蓄積できる端末を発売しました。ボーダフォンはVGAの高精細液晶を搭載した高機能機を投入しています。NTTドコモもつい先週、小型ながら完全防水機構を実現した機種や高速データ通信のHSDPAに対応した機種を発表したところです。当面は台数ベースではあまり大きく貢献しないでしょうが、携帯機器向け地上デジタル放送「ワンセグ」を視聴できる端末も徐々に出てきています。KDDIとNTTドコモに続き、ボーダフォンも「AQUOSケータイ」と銘打った製品を6月までに発売するとしています。

 このところ元気のなかった携帯電話機市場が、これを機に再び活況を取り戻せるか、それとも単なる踊り場に終わるのか、今後も目を離せないところです。


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